研究紹介

学位論文
2021年3月 卒業論文「恒星黒点の形成過程に対する星表面磁場の影響」(PDF

2023年2月 修士論文「太陽フレアの乱流の起源に関する三次元磁気流体シミュレーション研究」(PDF
査読付き雑誌論文
2023年1月 "Numerical Study on Excitation of Turbulence and Oscillation in Above-the-loop-top Region of a Solar Flare" (Astrophysical Journal)
(arXiv, ApJ)
研究テーマ
 大学院では太陽の研究をしています。太陽は私たちの住む地球に膨大なエネルギーを届けてくれる天体であり、太陽系の歴史、生命の進化、気候変動 などを解き明かすために太陽の研究は重要です。また太陽を研究することは恒星を研究することでもありますので、もちろん宇宙の研究にも繋がります。さらに太陽は 実験室ではなかなか再現できないような物理現象をたくさん見せてくれますので、プラズマ物理・磁気流体力学などの基礎物理の理解にも太陽研究は役立ちます。



 一般に宇宙物理の研究では大きく分けて「観測屋」と「理論屋」の二種類の研究者がいますが、私は理論の人です。観測屋が見つけた太陽の現象について、 「これはこういう理由でこうなっているはずだ」と物理の法則に基づいて説明を与えるのが我々理論屋の仕事です。

数値シミュレーション
 太陽は電子と陽子がバラバラになって動く気体、すなわちプラズマで構成されています(*1)。プラズマ流体が従う物理の方程式は既に知られており、以下の連立微分方程式によって表されます。
(*1)気体の電離度は場所によって異なりますが、数値計算上は完全電離プラズマとして扱うことができます



理論上はこれを解けばすべての太陽現象が説明できることになります。しかし残念ながらこの方程式はあまりにも複雑すぎるので、数学的に厳密に解くことはできません。 そこで、我々は方程式を「数値的に解く」ということをします。これらの方程式の解となる関数の形が分からなくても「ある時間・ある場所に対応する物理量の値」さえ分かれば物理系の 挙動はおおよそ理解できることになります。プログラミングで物理の方程式を記述し、それをコンピュータで数値的に解かせることを「数値シミュレーション」と 呼びます。私の研究手法は主にこの数値シミュレーションです。
 以下の動画は、私が行った数値シミュレーションの一例です。



こちらは「フレア」と呼ばれる太陽の爆発現象を模したシミュレーションです。色は圧力を表し、黒の線は磁力線を表します。 画面中央上部で「磁気リコネクション」と呼ばれる磁力線のつなぎ変わり現象が発生することで下側へ向かってガスの流れが生じ、それが積み重なることでループ構造ができあがります。